1 概要
本件は、発明の名称を「ペリクル膜、ペリクル枠体、ペリクル、その製造方法、露光原版、露光装置、半導体装置の製造方法」とする発明について、平成29年7月3日特許出願をし(優先権主張日は平成28年7月5日)、令和2年10月21日本件特許に係る特許権の設定登録を受け(請求項の数23)、同年11月11日に特許掲載公報が発行された原告ら(三井化学と産総研)に対し、複数の特許異議の申立て(①令和3年4月23日付け〔請求項1~18に係る特許に対するもの〕、②同年5月7日付け及び③同月11日付け〔いずれも請求項1~23に係る特許に対するもの〕の3件)がされたことから、特許庁は、これらの申立てを異議2021-700369号事件として審理を行い、 令和4年8月8日付けで取消理由通知(決定の予告)を下し、そのため、原告らは、同年11月11日、本件特許の特許請求の範囲(請求項1~23)を下記2(1)及び別紙2のとおりに訂正(本件訂正)する旨の訂正請求をした(訂正後の請求項の数17)ものの、結局、特許庁は、令和5年3月30日、本件訂正を認めた上で、「特許第6781864号の請求項1、3-18に係る特許を取り消す。特許第6781864号の請求項2、19-23に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。」との取消決定(新規性なし、進歩性なし、拡大先願違反)をしたことから、これに不服の原告らが、取消決定取消訴訟を提起したものです。
これに対して、知財高裁4部(宮坂さんの合議体ですね。)は、取消決定を取り消しました。つまりは新規性ありだし、進歩性もありだし、拡大先願の違反もなし、ということですね。
進歩性は同一性の話ではないのですけど、新規性と拡大先願については、先行技術との同一性の話です。ところが特許庁段階での、その同一性が覆ったというのですから、そりゃ取り上げずにはいられません。
まずは、クレームからです。
「【請求項1】
1A 支持枠の開口部に張設される露光用ペリクル膜であって、前記ペリクル膜は、厚さが200nm以下であり、前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブシートの自立膜であり、
1B 前記カーボンナノチューブシートは複数のカーボンナノチューブから形成されるバンドルを備え、前記バンドルは径が100nm以下であり、
1C 前記カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向しており、
1D 下記条件式(1)を満たし、
1G 前記カーボンナノチューブシートは、面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有し、
1H 前記カーボンナノチューブの径が0.8nm以上6nm以下である、
1I 露光用ペリクル膜。
(1)カーボンナノチューブシートの断面の制限視野電子線回折像において、前記カーボンナノチューブのバンドルの三角格子に由来する前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の、回折強度のピークとなる逆格子ベ クトルにおける回折強度と、前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の前記ピークと重ならず、ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける回折強度との差を、前記膜厚方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度と、前記膜厚方向の回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度との差で除した比R B が0.40以上である。 」
1A 支持枠の開口部に張設される露光用ペリクル膜であって、前記ペリクル膜は、厚さが200nm以下であり、前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブシートの自立膜であり、
1B 前記カーボンナノチューブシートは複数のカーボンナノチューブから形成されるバンドルを備え、前記バンドルは径が100nm以下であり、
1C 前記カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向しており、
1D 下記条件式(1)を満たし、
1G 前記カーボンナノチューブシートは、面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有し、
1H 前記カーボンナノチューブの径が0.8nm以上6nm以下である、
1I 露光用ペリクル膜。
(1)カーボンナノチューブシートの断面の制限視野電子線回折像において、前記カーボンナノチューブのバンドルの三角格子に由来する前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の、回折強度のピークとなる逆格子ベ クトルにおける回折強度と、前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の前記ピークと重ならず、ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける回折強度との差を、前記膜厚方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度と、前記膜厚方向の回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度との差で除した比R B が0.40以上である。 」
なかなかにマニアックな技術ですね。
半導体のプロセス系だとペリクルと聞いたらアレ!と頭に浮かびますけど、知らん人は知らんでしょう。
半導体ってカメラ(写真)の技術を使って、半導体を作るわけです。
まず、①ウェハーに膜を成膜して、それを設計図とおりに加工したいのです。そのため、②フォトレジストという耐薬品等性のある感光材料をその膜の上に塗ります(コーター)。
③その上部にフォトマスクという、設計図を転写して光の当たる所、当たらない所のある影絵的なシートを被せて光を当てます(この光がEUVなのが、オランダASML社しか作れないステッパーです。)。
④その後、現像するのですが(デベロッパー)、光の当たった部分が溶けるのがポジ型レジスト、光の当たらない部分が溶けるのがネガ型レジストです。現在は、感度の良さからポジ型が主流のようです。
⑤ほんで、現像してフォトレジストが乗ったウェハーをエッチャーでエッチングすると、レジストの無いところは膜が無くなります。あとは、レジストだけ取り去ると(アッシングなど)、これで一工程済みというわけです。
ペリクルというのは、上記③の光を当てる工程で使います。
フォトマスクにゴミがあると当然ゴミもマスクの役割をして、エッチングしたときに膜残りや逆に欠損が出来てしまいます。クリーンルームでは極力ゴミを減らしますけど、限界があります。
そこでペリクルを使い、フォトマスクの表面にカバーとして使います。仮にゴミがあったとしても、ペリクルの上にゴミが存在することになり、フォトマスクにピントが合うと、ペリクル上のゴミはピンボケとなり、悪さをすることが防げます。
こんな理屈ですね。
あと、クレーム用語等の定義で、以下の事項は有用です。
「【0050】
本発明において、バンドルとは、複数のカーボンナノチューブから形成される束のことである。
【0051】
本発明においてカーボンナノチューブシート断面の2次元回折像において、膜面に沿った方向のことを面内方向とし、面内方向に対して垂直方向のことを膜厚方向とする。
【0052】
本発明においてバンドルが「面内方向に配向」しているとは、カーボンナノチューブのバンドルおよびカーボンナノチューブの長軸方向が、カーボンナノチューブシートの面内方向と同じ向きであることをいう。言い換えれば、バンドルの長さ方向が厚さ方向(Z軸方向)には立ち上がらず、面方向(XY方向)にある、ということを意味する。バンドルの長さ方向がX軸方向またはY軸方向に並んでいる必要はなく、網目状になっていても良い。
【0053】
本発明においてバンドルが「膜厚方向に配向」しているとは、カーボンナノチューブのバンドルおよびカーボンナノチューブの長軸方向が、カーボンナノチューブシートの膜厚方向を向いている状態をいう。」
本発明において、バンドルとは、複数のカーボンナノチューブから形成される束のことである。
【0051】
本発明においてカーボンナノチューブシート断面の2次元回折像において、膜面に沿った方向のことを面内方向とし、面内方向に対して垂直方向のことを膜厚方向とする。
【0052】
本発明においてバンドルが「面内方向に配向」しているとは、カーボンナノチューブのバンドルおよびカーボンナノチューブの長軸方向が、カーボンナノチューブシートの面内方向と同じ向きであることをいう。言い換えれば、バンドルの長さ方向が厚さ方向(Z軸方向)には立ち上がらず、面方向(XY方向)にある、ということを意味する。バンドルの長さ方向がX軸方向またはY軸方向に並んでいる必要はなく、網目状になっていても良い。
【0053】
本発明においてバンドルが「膜厚方向に配向」しているとは、カーボンナノチューブのバンドルおよびカーボンナノチューブの長軸方向が、カーボンナノチューブシートの膜厚方向を向いている状態をいう。」
上記のとおり、ペリクルを透して光はフォトマスクに入りますので、ペリクルは透過性が高くないといけないわけです。他方、最近の、例えばEUV光は何にでも吸収されてしまい、その結果熱が発生するらしいので、熱にも強くないといけないようです。
そのため、カーボンナノチューブでペリクルを構成するっちゅうのは流行りのようです。
式(1)は電子線回折等での特性から特定するものです。
ほんで、「 R B の値が、0.40以上では面内配向しており、0.40未満では面内配向していないことを表す。R B の値は、0.40以上であることが好ましく、0.6以上がより好ましい」らしいです。
そして、新規性なしは引用文献1で、進歩性なしは引用文献1から3,拡大先願違反は先願1というものとの対比によります。
さて、引用文献1です。
「 [一致点]
「支持枠の開口部に張設される露光用ペリクル膜であって、
前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブシートの自立膜であり、
前記カーボンナノチューブの径が0.8nm以上6nm以下である、
露光用ペリクル膜。」
[相違点1A]
カーボンナノチューブシートについて、本件発明1は「前記ペリクル膜は、厚さが200nm以下であり、」「前記カーボンナノチューブシートは複数のカーボンナノチューブから形成されるバンドルを備え、前記バンドルは径が100nm以下であり、前記カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向しており、下記条件式(1)を満たし、前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有し」「(1)カーボンナノチューブシートの断面の制限視野電子線回折像において、前記カーボンナノチューブのバンドルの三角格子に由来する前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の、回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける回折強度と、前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の前記ピークと重ならず、ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける回折強度との差を、前記膜厚方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度と、前記膜厚方向の回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度との差で除した比 R B が0.40以上である」のに対し、引用発明1は、そのような構成か明らかでない点。 」
「支持枠の開口部に張設される露光用ペリクル膜であって、
前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブシートの自立膜であり、
前記カーボンナノチューブの径が0.8nm以上6nm以下である、
露光用ペリクル膜。」
[相違点1A]
カーボンナノチューブシートについて、本件発明1は「前記ペリクル膜は、厚さが200nm以下であり、」「前記カーボンナノチューブシートは複数のカーボンナノチューブから形成されるバンドルを備え、前記バンドルは径が100nm以下であり、前記カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向しており、下記条件式(1)を満たし、前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有し」「(1)カーボンナノチューブシートの断面の制限視野電子線回折像において、前記カーボンナノチューブのバンドルの三角格子に由来する前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の、回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける回折強度と、前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の前記ピークと重ならず、ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける回折強度との差を、前記膜厚方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度と、前記膜厚方向の回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度との差で除した比 R B が0.40以上である」のに対し、引用発明1は、そのような構成か明らかでない点。 」
細かい点がちょっと違うような感はあります。
しかし、
「相違点1Aは実質的なものではない。
R B 0.40以上事項は、露光用ペリクル膜のバンドルが面内配向をしていることを特定しているものであるところ、引用発明1の「CNT」のバンドルも「複雑なネットワークを平面内に位置し」、面内配向をしている。 」
と判断されてしまいました。
なので、進歩性も、
「 カーボンナノチューブに関する技術において、バンドルが複数のカーボンナノチューブから形成され、バンドルの径が100nm以下であるものは周知技術であり、カーボンナノチューブシート中でバンドルが面内配向し、前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有しているものも周知技術である。
R B 0.40以上事項は、露光用ペリクル膜のバンドルが面内配向をしていることを特定しているといえる。
CNTに関する周知技術も参酌して、引用発明1の「CNTペリクル膜」を相違点1Aに係る本件発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。 」
R B 0.40以上事項は、露光用ペリクル膜のバンドルが面内配向をしていることを特定しているといえる。
CNTに関する周知技術も参酌して、引用発明1の「CNTペリクル膜」を相違点1Aに係る本件発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。 」
とされました。
引用文献2についてです。
「 [一致点]
「カーボンナノチューブシートであり、
前記カーボンナノチューブシートは複数のカーボンナノチューブから形成されるバンドルを備える、膜。」
[相違点2A]
本件発明1は「支持枠の開口部に張設される露光用ペリクル膜」であって「厚さが200nm以下であ」り、「カーボンナノチューブシートの自立膜であり」のに対し、引用発明2は「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体を用いた光学製品である放熱シート」である点。
[相違点2B]
バンドルが、本件発明1は「径が100nm以下であり」、「カーボンナノチューブシート中で」「面内配向しており、」「(1)カーボンナノチューブシートの断面の制限視野電子線回折像において、前記カーボンナノチューブのバンドルの三角格子に由来する前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の、回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける回折強度と、前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の前記ピークと重ならず、ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける回折強度との差を、前記膜厚方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度と、前記膜厚方向の回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度との差で除した比 R B が0.40以上である。」の「条件式(1)を満た」すのに対し、引用発明2はそのようなものか明らかでない点。
[相違点2C]
カーボンナノチューブの径が、本件発明1は「0.8nm以上6nm以下」であるのに対し、引用発明2はそのようなものか明らかでない点。
[相違点2D]
カーボンナノチューブシートについて、本件発明1は「面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有し」ているのに対し、引用発明2は、そのような構成か明らかでない点。 」
「カーボンナノチューブシートであり、
前記カーボンナノチューブシートは複数のカーボンナノチューブから形成されるバンドルを備える、膜。」
[相違点2A]
本件発明1は「支持枠の開口部に張設される露光用ペリクル膜」であって「厚さが200nm以下であ」り、「カーボンナノチューブシートの自立膜であり」のに対し、引用発明2は「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体を用いた光学製品である放熱シート」である点。
[相違点2B]
バンドルが、本件発明1は「径が100nm以下であり」、「カーボンナノチューブシート中で」「面内配向しており、」「(1)カーボンナノチューブシートの断面の制限視野電子線回折像において、前記カーボンナノチューブのバンドルの三角格子に由来する前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の、回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける回折強度と、前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の前記ピークと重ならず、ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける回折強度との差を、前記膜厚方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度と、前記膜厚方向の回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度との差で除した比 R B が0.40以上である。」の「条件式(1)を満た」すのに対し、引用発明2はそのようなものか明らかでない点。
[相違点2C]
カーボンナノチューブの径が、本件発明1は「0.8nm以上6nm以下」であるのに対し、引用発明2はそのようなものか明らかでない点。
[相違点2D]
カーボンナノチューブシートについて、本件発明1は「面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有し」ているのに対し、引用発明2は、そのような構成か明らかでない点。 」
引用文献1が上のとおりですので、
「 (ア) カーボンナノチューブシートを含むペリクル膜として厚さが200nm以下のものは、周知技術である。
引用発明2の「放熱シート」は「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体を用いた光学製品であ」り、光学製品である放熱シートの一態様として、カーボンナノチューブを含むペリクル膜は、一般的に知られている。
ペリクル膜は支持枠に開口部に張設されることは、技術常識であり、カーボンナノチューブシートを自立膜とすることも、周知技術である。
そうすると、引用発明2に周知技術を採用して、相違点2Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た。
(イ) 引用発明2に周知技術を採用して、相違点2B~2Dに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た。 」
引用発明2の「放熱シート」は「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体を用いた光学製品であ」り、光学製品である放熱シートの一態様として、カーボンナノチューブを含むペリクル膜は、一般的に知られている。
ペリクル膜は支持枠に開口部に張設されることは、技術常識であり、カーボンナノチューブシートを自立膜とすることも、周知技術である。
そうすると、引用発明2に周知技術を採用して、相違点2Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た。
(イ) 引用発明2に周知技術を採用して、相違点2B~2Dに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た。 」
ありがちです。
引用文献3です。
「ア 本件発明1と引用発明3の一致点及び相違点について
[一致点]
「支持枠の開口部に張設される露光用ペリクル膜であって、
前記ペリクル膜は、厚さが200nm以下であり、
前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブシートの自立膜である、
露光用ペリクル膜。」
[相違点3A]
カーボンナノチューブシートについて、本件発明1は「前記カーボンナノチューブシートは複数のカーボンナノチューブから形成されるバンドルを備え、前記バンドルは径が100nm以下であり、前記カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向しており、下記条件式(1)を満たし、前記カーボンナノチューブシートは、面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有し」、「(1)カーボンナノチューブシートの断面の制限視野電子線回折像において、前記カーボンナノチューブのバンドルの三角格子に由来する前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の、回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける回折強度と、前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の前記ピークと重ならず、ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける回折強度との差を、前記膜厚方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度と、前記膜厚方向の回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度との差で除した比 R B が0.40以上である。」のに対し、引用発明3はそのようなものか明らかでない点。
[相違点3B]
カーボンナノチューブの径が、本件発明1は「0.8nm以上6nm以下」であるのに対し、引用発明3はそのようなものか明らかでない点。」
[一致点]
「支持枠の開口部に張設される露光用ペリクル膜であって、
前記ペリクル膜は、厚さが200nm以下であり、
前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブシートの自立膜である、
露光用ペリクル膜。」
[相違点3A]
カーボンナノチューブシートについて、本件発明1は「前記カーボンナノチューブシートは複数のカーボンナノチューブから形成されるバンドルを備え、前記バンドルは径が100nm以下であり、前記カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向しており、下記条件式(1)を満たし、前記カーボンナノチューブシートは、面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有し」、「(1)カーボンナノチューブシートの断面の制限視野電子線回折像において、前記カーボンナノチューブのバンドルの三角格子に由来する前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の、回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける回折強度と、前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の前記ピークと重ならず、ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける回折強度との差を、前記膜厚方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度と、前記膜厚方向の回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度との差で除した比 R B が0.40以上である。」のに対し、引用発明3はそのようなものか明らかでない点。
[相違点3B]
カーボンナノチューブの径が、本件発明1は「0.8nm以上6nm以下」であるのに対し、引用発明3はそのようなものか明らかでない点。」
そうすると、流れから行くと、
「(ア) 相違点3Aについて
バンドルが複数のカーボンナノチューブから形成され、バンドルの径が100nm以下で、カーボンナノチューブシート中で面内配向したもの及び面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有するカーボンナノチューブシートはいずれも周知技術である。また、上記R B 0.40以上事項は、露光用ペリクル膜のバンドルが面内配向をしていることを特定しているところ、引用発明3は「カーボンナノチューブシートの表面と実質的に平行にカーボンナノチューブが配向し」ている。
よって、引用発明3に周知技術を採用して、相違点3Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た。
バンドルが複数のカーボンナノチューブから形成され、バンドルの径が100nm以下で、カーボンナノチューブシート中で面内配向したもの及び面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有するカーボンナノチューブシートはいずれも周知技術である。また、上記R B 0.40以上事項は、露光用ペリクル膜のバンドルが面内配向をしていることを特定しているところ、引用発明3は「カーボンナノチューブシートの表面と実質的に平行にカーボンナノチューブが配向し」ている。
よって、引用発明3に周知技術を採用して、相違点3Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た。
(イ) 相違点3Bについて
引用発明3に周知技術を採用して、相違点3Bに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た。 」
引用発明3に周知技術を採用して、相違点3Bに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た。 」
特許庁はよくこういう手抜きの認定しますよねえ~審査段階だとしょっちゅうだと思いますが、一応これ異議申立てなんすけどねえ。
先願1です。
「 先願1には、以下の先願発明A-Eが記載されている。
(先願発明A)
「ペリクルフレームのようなフレームによって、その縁部で懸架されている、極端紫外線リソグ
ラフィレチクルのための自立型カーボンナノチューブペリクル膜であって、
CNTペリクル膜の厚さは、5~50nmの範囲であり、
CNTペリクル膜は、CNTフィルムを加圧することによって、形成することができ、
CNTフィルムが、整列した網を形成する複数の束から形成され、
CNT束は、例えば、2~20個の個々のCNTを含むことができ、
CNTフィルムのCNTまたはCNT束は、重要または主な方向に沿って、または複数の主方向に沿って配置または整列され、
CNTフィルムは、0.5~2nmの範囲の直径を有するSWCNTから形成することができ、
CNTの束から形成されたメッシュ、ウェブ、グリッドなどのCNTの接続された配置であり、
カーボンナノチューブフィルム上にB、B4C、ZrN、Mo、Ru、SiC、TiNおよびa-Cからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含むコーティングが形成される、
自立型カーボンナノチューブペリクル膜。」
(先願発明B)
「先願発明Aに記載の自立型カーボンナノチューブペリクル膜と、カーボンナノチューブペリクル膜を固定するペリクルフレームと、を含むペリクル。」
(先願発明C)
「先願発明Bに記載のペリクルがレチクル上に取り付けられた、レチクルシステム。」
(先願発明D)
「レチクル上に存在するパターンは、EUV放射で先願発明Cに記載のレチクルシステムのレチクルを照明することによって、EUV放射に敏感な層に転写することができ、EUV光は、レチクルパターンによって変調され、フォトレジストがコーティングされたウエハ上に結像される半導体を製造する極端紫外線リソグラフィ装置。」
(先願発明E)
「レチクル上に存在するパターンは、EUV放射で先願発明Cに記載のレチクルシステムのレチクルを照明することによって、EUV放射に敏感な層に転写することができ、EUV光は、レチクルパターンによって変調され、フォトレジストがコーティングされたウエハ上に結像される半導体を製造する極端紫外線リソグラフィ。」 」
(先願発明A)
「ペリクルフレームのようなフレームによって、その縁部で懸架されている、極端紫外線リソグ
ラフィレチクルのための自立型カーボンナノチューブペリクル膜であって、
CNTペリクル膜の厚さは、5~50nmの範囲であり、
CNTペリクル膜は、CNTフィルムを加圧することによって、形成することができ、
CNTフィルムが、整列した網を形成する複数の束から形成され、
CNT束は、例えば、2~20個の個々のCNTを含むことができ、
CNTフィルムのCNTまたはCNT束は、重要または主な方向に沿って、または複数の主方向に沿って配置または整列され、
CNTフィルムは、0.5~2nmの範囲の直径を有するSWCNTから形成することができ、
CNTの束から形成されたメッシュ、ウェブ、グリッドなどのCNTの接続された配置であり、
カーボンナノチューブフィルム上にB、B4C、ZrN、Mo、Ru、SiC、TiNおよびa-Cからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含むコーティングが形成される、
自立型カーボンナノチューブペリクル膜。」
(先願発明B)
「先願発明Aに記載の自立型カーボンナノチューブペリクル膜と、カーボンナノチューブペリクル膜を固定するペリクルフレームと、を含むペリクル。」
(先願発明C)
「先願発明Bに記載のペリクルがレチクル上に取り付けられた、レチクルシステム。」
(先願発明D)
「レチクル上に存在するパターンは、EUV放射で先願発明Cに記載のレチクルシステムのレチクルを照明することによって、EUV放射に敏感な層に転写することができ、EUV光は、レチクルパターンによって変調され、フォトレジストがコーティングされたウエハ上に結像される半導体を製造する極端紫外線リソグラフィ装置。」
(先願発明E)
「レチクル上に存在するパターンは、EUV放射で先願発明Cに記載のレチクルシステムのレチクルを照明することによって、EUV放射に敏感な層に転写することができ、EUV光は、レチクルパターンによって変調され、フォトレジストがコーティングされたウエハ上に結像される半導体を製造する極端紫外線リソグラフィ。」 」
こうなると判断も一緒です。
「 本件発明1は、先願発明Aと同一である。
先願発明Aの「『CNTフィルムのCNTまたはCNT束は、重要または主な方向に沿って、または複数の主方向に沿って配置または整列され、』『CNTの束から形成されたメッシュ、ウェブ、グリッドなどのCNTの接続された配置であり』」は、本件発明1の「カーボンナノチューブシートは、面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有し」に相当する。
R B 0.40以上事項は、露光用ペリクル膜のバンドルが面内配向をしていることを特定しているといえることから、先願発明Aの「CNTフィルムのCNTまたはCNT束は、重要または主な方向に沿って、または複数の主方向に沿って配置または整列され」は、本件発明1の「カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向しており、下記条件式(1)を満たし、」(条件式(1)はR B 0.40以上事項)に相当する。 」
R B 0.40以上事項は、露光用ペリクル膜のバンドルが面内配向をしていることを特定しているといえることから、先願発明Aの「CNTフィルムのCNTまたはCNT束は、重要または主な方向に沿って、または複数の主方向に沿って配置または整列され」は、本件発明1の「カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向しており、下記条件式(1)を満たし、」(条件式(1)はR B 0.40以上事項)に相当する。 」
こういう感じです。
2 問題点
色々あるのですけど、ポイントとしては、原告の主張、
①「引用文献1中、構成1cの認定根拠とされる部分(12頁7~8行)は、CNT自立膜を得ることができるかもしれないという筆者の予想ないし期待を述べたものであって、実際に行った実験内容に基づくものではなく、図14(b)も上記予想ないし期待に基づく模式図にすぎない。 」
という点が一つあります。
また、進歩性に効いてくる点としては、
②「本件決定がR B 0.4以上事項が実質的な相違点でないと判断する理由は、本件発明1のR B 0.4以上事項はCNTのバンドルが面内配向していることを特定するものであり、引用発明1は面内配向しているものを想定しているから、「CNTペリクル膜中でバンドルが面内配向し」ているものである以上引用発明1もR B 0.4以上事項を満たすことになるというものである。
しかし、本件発明1は、「前記カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向しており」との構成(構成1C)に加え、「下記条件式(1)を満たし」としてR B が0.40以上であるとし、面内配向が高度であることをR B の値により特定しているのである(構成1D)。 」ですね。
しかし、本件発明1は、「前記カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向しており」との構成(構成1C)に加え、「下記条件式(1)を満たし」としてR B が0.40以上であるとし、面内配向が高度であることをR B の値により特定しているのである(構成1D)。 」ですね。
つまり、面内配向はそのとおりだけど、数値で厳密に特定している、こういうことは他の文献にはねえだろ!ということになります。
ですので、進歩性等の判断手順例でよく言われる論点表に照らすと、引用発明の認定の誤り、そのため一致点・相違点認定も誤り、そういう論点になるのではないかと思います。
つまりは、進歩性でよく見る、動機付けの論点や、設計事項の論点ではない(そこまで高度な論点じゃない)ってことですね。
ということで、法律面というよりもかなり技術面に寄った話になるのではないかと思います。
3 判旨
「1 取消事由1、2(引用文献1に基づく新規性、進歩性の判断の誤り)について 原告らが取消事由1、2を通じて主張するところの眼目は、①引用文献1には「自立CNTペリクル膜」の発明が記載されているとはいえない、②引用発明1には本件発明のR B 0.4以上事項の記載がないところ、これらに係る本件発明1との相違点は実質的なものであり、かつ、引用発明1にR B 0.4以上事項を持ち込むことは容易想到ともいえないという2点に集約される。
当裁判所は、①に係る原告らの主張は採用できないが、②の主張は理由があるものと判断する。以下に詳説する。
(1) 引用文献1(甲1)の記載事項
引用文献1には以下の開示があるものと認められる。
引用文献1には以下の開示があるものと認められる。
・・・
(2) 引用文献1には「自立CNTペリクル膜」の記載があるか 上記(1)のとおり、引用文献1には、SiNxの影響を差し引いたCNT膜単体での透過率の計算がなされていること(9頁9~24行、図10)、RuコーティングされたCNT膜を作成した例(図14(b))において背面SiN膜をエッチング除去し自立膜とする技術も記載されていること、CNT自立膜自体は甲18等に記載された周知の技術であることに照らすと、上記(1)キの疑義のある記載の解釈に立ち入るまでもなく、当業者は、引用文献1からCNT自立膜の構成を認識することができるといえる。
原告らは、甲18記載の技術と引用文献1記載の技術とでは、自立膜の作製方法が異なる旨主張するが、引用発明1は物に係る発明であるから、その発明の新規性、進歩性に影響を及ぼすものとはいえない。
(3) R B 0.4以上事項の有無は実質的相違点か
ア 本件決定が認定した本件発明1と引用発明1の相違点1A(別紙3「本件決定の理由」1(2)アの[相違点1A])の中には「引用発明1ではR B 0.4以上事項の構成が明らかでない」点が含まれているところ、本件決定は、このR B 0.4以上事項の有無に係る相違点は実質的な相違点ではないと判断した。
イ しかし、引用文献1には、R B の数値を特定する記載は一切なく、その示唆もない。また、CNT膜の面内配向性をR B によって特定すること自体も、引用文献1その他の出願時の文献に記載されていたと認めることはできず、技術常識であったということもできない。
ウ 本件決定の上記アの判断は、R B の値が、0.40以上では面内配向して
おり、0.40未満では面内配向していないことを表す旨の本件明細書等の記載(【0104】)から、本件発明1のR B 0.4以上事項が、CNTのバンドルが面内配向していることを特定するものであり、引用発明1は面内配向しているものを想定しているから、R B 0.4以上事項を満たすことになるとの理解に基づくものと解される。
しかし、本件発明1の特許請求の範囲に照らすと、CNTバンドルが面内配向しているという定性的構成(構成1C)と、R B 0.4以上事項というパラメータによる定量的構成(構成1D)は独立の構成となっており、本件明細書の【0104】等の記載を踏まえても、引用発明1のCNTバンドルが面内配向の特性を有しているからといって、R B 0.4以上事項を当然に満たすと判断することはできない。
・・・
(4) 以上のとおりであって、本件決定には、R B 0.4以上事項を含む相違点1Aが実質的なものであることを看過し、引用発明1に基づき本件発明1、3~5が新規性を欠くとした誤りがあり、取消事由1は理由がある。 」
「 2 取消事由2(引用文献1を主引用例とする進歩性の判断の誤り)について
(1) 本件決定が認定した本件発明1と引用発明1との相違点1A及び本件発明6と引用発明1との相違点6AにはR B 0.4以上事項の有無が含まれるところ、引用文献1には、R B の数値を特定する記載は一切なく、その示唆もないこと、CNT膜の面内配向性をR B によって特定すること自体も、引用文献1その他の出願時の文献に記載されていたと認めることはできず、技術常識であったということもできないこと、薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば通常R B 0.4以上事項を満たしているとの被告の主張が採用できないことは前述のとおりである。
(2) そうすると、他に副引用例が提出されているわけでもない本件において、当業者が相違点1Aに係る本件発明1の構成又は相違点6Aに係る本件発明6の構成を容易に想到することができたとはいえず、引用発明1に基づき本件発明1及び本件発明6の進歩性を否定した本件決定の判断には誤りがある。
本件発明3~5、7~18は、本件発明1又は本件発明6を引用し、本件発明1又は本件発明6の構成を全て含むものであるから、引用発明1に基づき本件発明3~5、7~18の進歩性を否定した本件決定の判断には誤りがある。
よって、取消事由2は理由がある。 」
(1) 本件決定が認定した本件発明1と引用発明1との相違点1A及び本件発明6と引用発明1との相違点6AにはR B 0.4以上事項の有無が含まれるところ、引用文献1には、R B の数値を特定する記載は一切なく、その示唆もないこと、CNT膜の面内配向性をR B によって特定すること自体も、引用文献1その他の出願時の文献に記載されていたと認めることはできず、技術常識であったということもできないこと、薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば通常R B 0.4以上事項を満たしているとの被告の主張が採用できないことは前述のとおりである。
(2) そうすると、他に副引用例が提出されているわけでもない本件において、当業者が相違点1Aに係る本件発明1の構成又は相違点6Aに係る本件発明6の構成を容易に想到することができたとはいえず、引用発明1に基づき本件発明1及び本件発明6の進歩性を否定した本件決定の判断には誤りがある。
本件発明3~5、7~18は、本件発明1又は本件発明6を引用し、本件発明1又は本件発明6の構成を全て含むものであるから、引用発明1に基づき本件発明3~5、7~18の進歩性を否定した本件決定の判断には誤りがある。
よって、取消事由2は理由がある。 」
「3 取消事由3(引用文献2を主引用例とする進歩性の判断の誤り)について
(1) 引用文献2(甲2)の記載事項
引用文献2には、以下の開示があるものと認められる。
(1) 引用文献2(甲2)の記載事項
引用文献2には、以下の開示があるものと認められる。
・・・
(2) 以上を前提に、引用発明2の認定の誤り、相違点の認定の誤りについて検討する。
上記(1)カによれば、引用文献2記載の放熱体は、「光学製品」等の他の物品で発した熱を「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」が放熱するものであり(37頁28行~38頁1行)、ここでいう「光学製品」と「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」は別個の物品である。
ところが、本件決定は、引用発明2を、「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体を用いた光学製品である放熱シート」とし、「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」自体が「光学製品」であるという前提で引用発明2の認定をしており、同認定は誤りである。
そして、この誤った認定は、相違点2A及び相違点2H(引用発明2は「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体を用いた光学製品である放熱シート」であるとの点)の認定にもそのまま反映されている。
この認定の誤りは、引用発明2の技術分野、基本的な技術的意義に関わってくるものであって、決定の結論に影響を及ぼすものである。
(3) 次に、容易想到性の判断について検討する。
ア 相違点2A及び相違点2Hについて
引用文献2に記載された発明においては、熱を発生する物品(光学製品等)と、その熱を放熱する「放熱体」とが別個のものとして存在する。一方、本件発明1における「カーボンナノチューブシートの自立膜」である「ペリクル膜」は、引用文献2でいう「熱を発生する物品(光学製品等)」であり「放熱体」に該当するものではない。
したがって、引用発明2における「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」を「放熱体」に該当しないペリクル膜として適用するということは、引用文献2の記載から離れた適用であり、論理付けが成立しない。また、引用文献2にはペリクル膜の例示はなく、その示唆もない。
よって、引用発明2について相違点2Aに係る本件発明1の構成とすること、相違点2Hに係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
イ 相違点2D及び相違点2Gについて
引用文献2の「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」は、垂直に起立した複数のCNTの集合体からなるものである(上記(1)イ、オ)。
したがって、当該構造体におけるCNT同士がバンドルを形成したとしても、バンドル自体が絡み合いを有し、その結果「網目構造」を形成するという形態に至ることは想定されていない。
仮にバンドル同士が絡み合い「網目構造」を有する状態に至ったとすれば、そのような状態の構造は、もはや「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」ではなくなり、垂直配向した単層カーボンナノチューブのバ ルク構造体を得るという引用文献2記載の課題にも反するから、そのような適用には阻害要因が存在する。
(4) 以上のとおりであって、本件決定は引用発明2及び相違点2Aの認定、相違点2A及び相違点2H並びに相違点2D及び相違点2Gの容易想到性の判断に誤りがあるから、引用発明2に基づき本件発明1及び本件発明6の進歩性を否定した本件決定の判断には誤りがある。
上記(1)カによれば、引用文献2記載の放熱体は、「光学製品」等の他の物品で発した熱を「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」が放熱するものであり(37頁28行~38頁1行)、ここでいう「光学製品」と「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」は別個の物品である。
ところが、本件決定は、引用発明2を、「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体を用いた光学製品である放熱シート」とし、「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」自体が「光学製品」であるという前提で引用発明2の認定をしており、同認定は誤りである。
そして、この誤った認定は、相違点2A及び相違点2H(引用発明2は「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体を用いた光学製品である放熱シート」であるとの点)の認定にもそのまま反映されている。
この認定の誤りは、引用発明2の技術分野、基本的な技術的意義に関わってくるものであって、決定の結論に影響を及ぼすものである。
(3) 次に、容易想到性の判断について検討する。
ア 相違点2A及び相違点2Hについて
引用文献2に記載された発明においては、熱を発生する物品(光学製品等)と、その熱を放熱する「放熱体」とが別個のものとして存在する。一方、本件発明1における「カーボンナノチューブシートの自立膜」である「ペリクル膜」は、引用文献2でいう「熱を発生する物品(光学製品等)」であり「放熱体」に該当するものではない。
したがって、引用発明2における「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」を「放熱体」に該当しないペリクル膜として適用するということは、引用文献2の記載から離れた適用であり、論理付けが成立しない。また、引用文献2にはペリクル膜の例示はなく、その示唆もない。
よって、引用発明2について相違点2Aに係る本件発明1の構成とすること、相違点2Hに係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
イ 相違点2D及び相違点2Gについて
引用文献2の「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」は、垂直に起立した複数のCNTの集合体からなるものである(上記(1)イ、オ)。
したがって、当該構造体におけるCNT同士がバンドルを形成したとしても、バンドル自体が絡み合いを有し、その結果「網目構造」を形成するという形態に至ることは想定されていない。
仮にバンドル同士が絡み合い「網目構造」を有する状態に至ったとすれば、そのような状態の構造は、もはや「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」ではなくなり、垂直配向した単層カーボンナノチューブのバ ルク構造体を得るという引用文献2記載の課題にも反するから、そのような適用には阻害要因が存在する。
(4) 以上のとおりであって、本件決定は引用発明2及び相違点2Aの認定、相違点2A及び相違点2H並びに相違点2D及び相違点2Gの容易想到性の判断に誤りがあるから、引用発明2に基づき本件発明1及び本件発明6の進歩性を否定した本件決定の判断には誤りがある。
また、本件発明3~5、7~18は、本件発明1又は本件発明6を引用し、
本件発明1又は本件発明6の構成を全て含むものであるから、引用発明2に
基づき本件発明3~5、7~18の進歩性を否定した本件決定の判断には誤
りがある。
よって、取消事由3は理由がある。
本件発明1又は本件発明6の構成を全て含むものであるから、引用発明2に
基づき本件発明3~5、7~18の進歩性を否定した本件決定の判断には誤
りがある。
よって、取消事由3は理由がある。
「4 取消事由4(引用文献3を主引用例とする本件発明の進歩性の判断の誤り)について
原告らは、取消事由4として、①引用文献3の認定の誤り、②引用発明3に基づく容易想到性についての判断の誤りを主張するところ、以下に述べるとおり、当裁判所は、①に係る原告らの主張は採用できないが、②の主張は理由があるものと判断する。
(1) 引用文献3(甲3)の記載事項
引用文献3には、以下の開示があるものと認められる。
原告らは、取消事由4として、①引用文献3の認定の誤り、②引用発明3に基づく容易想到性についての判断の誤りを主張するところ、以下に述べるとおり、当裁判所は、①に係る原告らの主張は採用できないが、②の主張は理由があるものと判断する。
(1) 引用文献3(甲3)の記載事項
引用文献3には、以下の開示があるものと認められる。
・・・
(2) 原告らは、引用文献3には、EUV用ペリクル膜として実用に耐える性能の配向したカーボンナノチューブシートは示されておらず、マスクペリクルとして配置される、配向したカーボンナノチューブシートを含む自立型の光学素子」を満たす発明を当業者が作れるように記載されているとはいえないから、特許法29条1項3号の「刊行物に記載された発明」が記載されているとはいえない旨主張する。
しかし、当業者は、引用発明3に係る光学素子を、技術常識に属する自立膜を構成するSWCNT膜(甲18)をも踏まえて認識、理解するところ、当該膜は引用発明3でいう「マスクペリクル」として使用できる「配向カーボンナノチューブシート」に該当するのであるから、引用文献3の記載及び技術常識に照らして、ペリクル膜として使用できる自立型の「配向カーボンナノチューブシート」の作製方法を理解できると解され、引用文献3に「刊行物に記載された発明」が記載されていないとはいえない。
しかし、当業者は、引用発明3に係る光学素子を、技術常識に属する自立膜を構成するSWCNT膜(甲18)をも踏まえて認識、理解するところ、当該膜は引用発明3でいう「マスクペリクル」として使用できる「配向カーボンナノチューブシート」に該当するのであるから、引用文献3の記載及び技術常識に照らして、ペリクル膜として使用できる自立型の「配向カーボンナノチューブシート」の作製方法を理解できると解され、引用文献3に「刊行物に記載された発明」が記載されていないとはいえない。
原告らは、甲18のSWCNTの自立膜は触媒鉄粒子が含まれ、EUV用ペリクルとしての実用に耐える性能を有しない旨主張するが、実用に耐えるものであるか否かは本件特許請求の範囲に直接特定された事項ではなく、原告らの主張は対比に必要な限度を超えた事項を要求するものであるし、鉄触媒粒子がEUV光を吸収する不純物となるのであれば、当業者は適宜これを除去した態様として引用発明3を理解するものといえるから(乙16~18)、原告らの主張は採用できない。
よって、引用発明3の認定に誤りがあるとの原告らの主張は採用できない。
(3) 次に、引用文献3に基づく容易想到性について検討する。
よって、引用発明3の認定に誤りがあるとの原告らの主張は採用できない。
(3) 次に、引用文献3に基づく容易想到性について検討する。
本件決定が認定した本件発明1と引用発明3との相違点3A及び本件発明6と引用発明3との相違点3DにはR B 0.4以上事項の有無が含まれるところ、引用文献3には、R B の数値を特定する記載は一切なく、その示唆もない。 CNT膜の面内配向性をR B によって特定すること自体も、引用文献3その他の出願時の文献に記載されていたと認めることはできず、技術常識であったということもできないこと、薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば通
常R B 0.4以上事項を満たしているとの被告の主張が採用できないことは前述のとおりである。
被告は、面内配向膜である引用発明3のペリクル膜において膜厚を200nm以下にまで小さくしつつ、バンドル径を通常存在する100nm以下とするように構成すれば、R B 0.4以上事項を満たすことになる旨主張するが、上記被告の主張は、膜厚及びバンドル径の上限値とR B の数値の関係を定量的に特定するものではなく、膜厚200nm以下でバンドル径が100nm以下であるカーボンナノチューブの面内配向膜であっても、R B が0.4以上ではない膜も存在する(甲40)ことに照らすと、被告主張のとおり構成することで、引用発明3がR B 0.4以上事項を満たすことになるとはいえない。
常R B 0.4以上事項を満たしているとの被告の主張が採用できないことは前述のとおりである。
被告は、面内配向膜である引用発明3のペリクル膜において膜厚を200nm以下にまで小さくしつつ、バンドル径を通常存在する100nm以下とするように構成すれば、R B 0.4以上事項を満たすことになる旨主張するが、上記被告の主張は、膜厚及びバンドル径の上限値とR B の数値の関係を定量的に特定するものではなく、膜厚200nm以下でバンドル径が100nm以下であるカーボンナノチューブの面内配向膜であっても、R B が0.4以上ではない膜も存在する(甲40)ことに照らすと、被告主張のとおり構成することで、引用発明3がR B 0.4以上事項を満たすことになるとはいえない。
(4) そうすると、当業者が相違点3Aに係る本件発明1の構成又は相違点3Dに係る本件発明6の構成を容易に想到することができたとはいえず、引用発明3に基づき本件発明1及び本件発明6の進歩性を否定した本件決定の判断には誤りがある。
本件発明3~5、7~18は、本件発明1又は本件発明6を引用し、本件発明1又は本件発明6の構成を全て含むものであるから、引用発明3に基づき本件発明3~5、7~18の進歩性を否定した本件決定の判断には誤りがある。
よって、取消事由4は理由がある。」
本件発明3~5、7~18は、本件発明1又は本件発明6を引用し、本件発明1又は本件発明6の構成を全て含むものであるから、引用発明3に基づき本件発明3~5、7~18の進歩性を否定した本件決定の判断には誤りがある。
よって、取消事由4は理由がある。」
「5 取消事由5(本件発明1、3~5、13~18と拡大先願に係る発明との同一性に関する判断の誤り)について
原告らは、取消事由5として、①自立型ペリクル膜の形成が加圧結合によるものか(先願発明A)、網目構造によるものか(本件発明1)という先願1の課題解決の中核をなす構成に係る相違点の看過、②R B 0.4以上事項の有無を実質的な相違点と認めなかった判断の誤りを主張するところ、以下に述べるとお り、当裁判所は、①に係る原告らの主張は採用できないが、②の主張は理由があるものと判断する。
(1) 先願1(甲19)の記載事項
先願1には、以下の開示があるものと認められる。
原告らは、取消事由5として、①自立型ペリクル膜の形成が加圧結合によるものか(先願発明A)、網目構造によるものか(本件発明1)という先願1の課題解決の中核をなす構成に係る相違点の看過、②R B 0.4以上事項の有無を実質的な相違点と認めなかった判断の誤りを主張するところ、以下に述べるとお り、当裁判所は、①に係る原告らの主張は採用できないが、②の主張は理由があるものと判断する。
(1) 先願1(甲19)の記載事項
先願1には、以下の開示があるものと認められる。
・・・
(2) 加圧結合か網目構造かの相違点について
原告らは、本件決定が、先願1に記載された課題解決の中核をなす「オーバ 10 ーラップしたCNT又は交差するCNTを、2つの加圧面の間で加圧することで共に結合し、これにより自立型CNTペリクル膜を形成するものである」構成を先願発明に含めなかったことが不当である旨主張する。
しかし、上記(1)エ、カ(図1)に照らすと、先願発明Aも、本件発明1と同様、「面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造」(構成1G)を備えているものと認められる。先願発明AのCNTの束では化学結合が生じているとしても、本件発明1の構成1Gは、化学結合を含むバンドル同士が絡み合う態様を排除するものとはいえない。加圧結合か網目構造かの相違点の看過をいう原告らの主張は、CNTの加圧結合による自立型CNTペリクル膜の形成(先願1)と、面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造によるペリクル膜の形成(本件発明1)を択一関係のように理解するものであるが、その前提において失当である。 原告らは、本件決定が、先願1に記載された課題解決の中核をなす「オーバ 10 ーラップしたCNT又は交差するCNTを、2つの加圧面の間で加圧することで共に結合し、これにより自立型CNTペリクル膜を形成するものである」構成を先願発明に含めなかったことが不当である旨主張する。
(3) R B 0.4以上事項に係る相違点について
本件決定は、本願発明Aの「CNTフィルムのCNTまたはCNT束は、重要または主な方向に沿って、または複数の主方向に沿って配置または整列され」は、本件発明1のR B 0.4以上事項に相当すると判断したが、先願1には、R B の数値を特定する記載は一切なく、その示唆もない。CNT膜の面内配向性をR B によって特定すること自体も、先願1その他の出願時の文献に記載されていたと認めることはできず、技術常識であったということもできないことは前述のとおりであり、本件決定の上記判断は根拠を欠くというべきである。
被告は、先願発明Aに係る「自立型カーボンナノチューブペリクル膜」は、厚さが5~50nmの範囲であって、0.5~2nmの範囲の直径を有するSWCNTから形成され、自立するものであり、しかも、加圧前の「CNTフィルム」を製造するのに、特段の配向秩序が与えられているとは解されないことから、当該「自立型カーボンナノチューブペリクル膜」は、薄膜自立無秩序SWCNTシートに該当し、薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば通常R B 0.4以上事項を満たしている旨主張する。しかし、被告の主張は、特段の配向秩序が与えられていないカーボンナノチューブ自立膜における厚さ及びSWCNT直径とR B との関係を定量的に特定するものではなく、薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば通常R B 0.4以上事項を満たしているとの被告の主張が採用できないことは前述のとおりである。被告の主張は採用できない。
よって、先願発明Aは本件発明1と同一とはいえない。
(4) そうすると、先願発明Aが本件発明1と同一だとした本件決定の判断には誤りがある。
本件発明1を引用する本件発明3~5、13~16についても、R B 0.4以上事項を含む以上、先願発明A~Eと同一とはいえず、この点についても本件決定の判断には誤りがある。 」
4 検討
何だか異議申立てあるあるネタっぽい感じがします。
理由は2つあります。
まずは、特許庁は騙せても?裁判所は騙せなかった?、この点です。
特許庁の特許の審査官・審判官って一応理系出身なので、本当はただの行政官なのに、その技術分野の専門家などとちょっと勘違いしている人が多いわけです(私も人のことは言えませんが。)。
なので、ああもう分かっている分かっている、ああもうみなまで言うな、ああもうそんなことは当たり前・・・ってなりやすいです。
もちろんこういうのは分野が違っても、どんなことにも当てはまることです。
弁護士に相続の話、政治家に分配の話、経済学者に効用の話、医者に薬効の話・・・、こういう自称専門家の皆さんが陥りがちな罠というか、慢心ですね(王様は裸だと言えない大人ってことです。)。ガハハハ。
そうすると、R B の値が、0.40以上では面内配向してんやろ、せやったら面内配向のやつはRB0.40以上が全部書かれてることになってるんとちゃうん?そやろ、わいはようわかっとるわ~大阪名物、石より固い黒仁丹や~ってなりやすいわけですよ。
だけど、裁判官って究極のドシロウトなので(王様は裸だと言える子供だということです。)、はあさっぱり分かりませんね、分からないのは我々が悪いのではなく、説明下手なあなたが悪いのですよ~となり、裁判官のOBでも居ない限り忖度してもらえません。
なので、後の話に関係しますけど、変なパラメータの特許はやっぱ潰しづらいですわな(恐らく、勝手に作ったRBなるパラメータで数値限定した本件特許、進歩性では潰れないのではないか?と。)。
だけど、逆に、そういう技術者もどきの審査官・審判官の特性を読んだ対策が功を奏する場合もあります。
それは面接の多用ですね。
審査だけではなく、特許の異議でも面接は出来ます。
私はソニーの知財部に居たころから弁護士で代理人をしている今日この頃まで、これを使ってそこそこ特許を救ってきました~。
これねえ、知っている人は知ってますけど、当事者でも代理人側でも知らない人は知らないので、豆知識的に覚えてた方がいいです。ま、異議申立てって、意外と、知財部でも特許事務所でも(法律事務所ならなおさら)、やったこともやられたこともないって多いかもしれません。なので、経験がないのかもしれませんけどね。
いや、だって技術者もどきの審査官・審判官にとって、現役のソニーの技術者が直接面談に来る・・・、滅多にない機会だと思いませんか?勿論、当時ね、当時。今、ソニーの技術者が来ても有り難みは0かもしれませんけど(今だったら、オープンAIとかエヌビディアの技術者が良いでしょうね。)。ムフフフ。
なので、こういうときに逆に言わずもがなの点をくすぐると(審査官・審判官も人の子なので、バリバリのエンジニアが来て頼めば悪い気はしないっすよねえ。)、少なくとも異議申立てはスルー出来たりするものです(訂正はしょうがないっすかねえ。)。
次の点です。
それは、ああ、これは業者に調査を頼んでダメ元で出したなあって感じです。
まあぶっちゃけると、業者に頼んで、出た資料で、しかも業者のコメントをそのまま異議理由にしたような感じがあります。今回の引用文献2がペリクル膜用じゃなかったなんて、その典型です。
ま、業者としても、ほらすごい近い資料が見つかったよ、うちってすごい?ってアピールしないといけませんから、業者の資料同梱のコメントには、これだけで新規性なしだとかの大げさアピールが混じりがちです。
勿論、業者も素人ではなく、知財部経験者や特許技術者を抱えてますので、あながちホラではないのですけど、よく見るとこの点は言わずもがなで誤魔化しているなあという所がチラホラ見えるわけです(今回のRBの記載がどの引用文献にも無かったことのように。)。
だけど、資料をもらったこっちとしても、所詮ダメ元の世界ですので(特に異議の段階は)、その大げさぶりをそのまま異議申立書に仕立てたりします。これで特許庁をだまくらかして訂正でもしてもらえりゃ儲け物だなあ~♬そんな所です。
今回異議申立てしたのは3人、特許庁のサイトによると、いずれもダミーのようです。
とすると、その後ろで同業他社の大手がバックに付いてることは確かですので、金をかけて業者に頼み、先行技術を調査して、そこそこ似ているのが出てきた・・・そういうことでしょう。惜しい所でしたね。ムフフフ。
5 追伸
毎度おなじみ流浪の弁護士、散歩のコーナーでございます。
本日はここ目黒新橋に来ております。
田道橋です。
清掃工場の緩衝地帯の公園です。
本当の茶屋坂です。
何で有名かというと、落語の目黒のさんまの舞台になった茶屋がここにあったわけです。
つまりは、目黒のさんまの起源です。
今日の最高気温は34.5度。ほんで天気予報通り今はちょっと雨が降っています。涼しくなっていいかも。
そしてこのブログもお開きです。