1 さて、今日も散歩日和の東京ですけど、この話はまた後でですね。
まずは、本日の日経の社会面の訃報欄からです。
「白川義員さん死去 写真家「南極大陸」」
ということですね。
有名な写真家なのでしょうが(私にはピンときません)、知財の関係者ではあの!事件の当事者と言えば早いのではないかと思います。
パロディモンタージュ事件と呼ばれている事件の原告さんです。
ま、色々面倒くさいので示しませんが、元ネタはアルプスの斜面をスキーヤーがうねうねと滑降する写真です。
それをマッド・アマノさんが、白黒化して斜面の頂上付近にデカいタイヤを置いたってやつです。
パロディの方は、非常に味のある面白い写真になってますけど、元の写真家の写真はどうってことないよくある感じですね。
事件としては、最高裁昭和51(オ)923号(昭和55年3月28日判決)になります(ま、この後、差し戻されて再度最高裁に上がったのですが・・・。昔よくあったパターンです。税金の無駄遣いですね。)。
この事件、最新の著作権判例百選(第6版)では、p138に載っています(元知財高裁所長の清水さんの解説です。)。
で、このころ、著作権法は旧法でして(それを全面的に改正したのが、現行著作権法ですけど、その起草者が加戸守行元知事ってわけです。なので、死してなおそのコンメンタールが重宝されるわけです。)、そこでの引用はこんな感じです。
「第三十条 既ニ発行シタル著作物ヲ左ノ方法ニ依リ複製スルハ偽作ト看做サス
・・・
第二 自己ノ著作物中ニ正当ノ範囲内ニ於テ節録引用スルコト
・・・」
この条文で言う「節録引用」ならOKなのでしょうけど、この節録引用って何じゃ?って感じがしますね。
で、その答えは上記最高裁のいわゆる2条件ってことです。
だけど、今の条文と違いますよね、全く。加戸守行先生の起草した現行法はこんな感じです。
「(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
・・・」
パッと見ても、「公正な慣行」というものと、正当な範囲は、あくまで「引用の目的上」だということになっています。
しかも、あれからeraが2つも変わりました(上記判決でもすでに40年以上前です。)。
なので、先例性は非常に疑問です。
それにそもそも私自身が著作権というものに懐疑的だからかもしれません。
いや、特許権はいいのですよ。プロ用だし、寿命も短いし、いかにもでっち上げの権利って感じがしますしね。
だけど、著作権って何かこの世が始まってから既に有る権利みたいな顔をしてます。でっち上げもいいところなのに、結構図々しいです。
英語ではそもそもcopyrightって呼ばれるくらいですから、初めの頃から文化がどうのこうのっていうよりも、ビジネス=お金の話が中心の権利だったハズです(そういうことも何故か忘れられてる・・・。)。
本件に即しても、この写真家はアルプスから使用料を徴収されてないのに、自分の写真が使われたら使用料を求めるってわけです(そんなの当然だと思いますか?はは~ん、教科書に載ってりゃ何でも信じるタイプですね?お宅?)。
で、そんな権利がこれからもまだ70年も続く・・・ってことです(著作権法51条2項)。
最高裁に先立つ地裁判決は昭和47年だったらしいので、120年以上も権利が存在するってことですね。馬鹿げてると思いませんか?
2 続いて法曹の人事の話です。
今の最高裁の長官の大谷さんが定年で、次の長官は、戸倉さんになるそうです(私の同級生の天敵ですね。)。
なので、ポストが一つ空くわけですが、そこには、今崎東京高裁長官がアップされるようです。
で、ここまではいいのですが、注目はその後です。
実は大谷さんだけではなく、菅野博之さんも定年のようです(知財高裁の4部によく似た名前の部長が居ますので、フルネームにさせて頂きます。)。
ほんで、その菅野博之さんの後釜、誰だと思いますか?そう、記事のとおり、尾島明大阪高裁長官です。
で、それがどうしたの?って感じですか?それじゃあ何だあんた知財のマニアじゃないのねえ、って感じですわ。
尾島明と言えば、そう!TRIPS協定のコンメンタールですよ。
ま、アマゾンで探すと尾島さんの名前でもう一冊見つかると思いますけど、そちらは(知財研のやつですね。私の天敵の知財協とは違います。)、編集だけのようですから(勿論マニアのワタシはそっちも持ってますけどね。)、尾島さんの本と言えば、こっちでしょう。
で、そんな話をこのブログで随分昔にやったことがあります(2014年ですね。)。
そのとき、「スーパーエリート,10年後の最高裁判事ですな~こりゃ。」と書いたのですが、あれから8年しか経ってません。
いやあ本当にスーパーエリート、凡人の予想よりも随分早く最高裁の判事になるようですね。凄えなやっぱり。
3 mintsというのは分かりますよね。MINji saibanshorui denshi Teishutsu Systemです。
他方、今般、漸く民事訴訟法が改正され、国会で成立しました。
ま、手続法なので、とっと改正してとっとと施行すりゃあいいと思うのですが、そこで漸く訴状の電子提出が可能なのですね。
私なんかボケっとしてますので、あれmintsでは訴状の提出出来ねえんだと改めて思った次第です。
つまりは、このmints、改正民事訴訟法施行までのつなぎです。FAXでやれるものをネットでやれるようになった・・・それだけです(ま、それでもしょうもない写しを5部だとか7部だとか印刷して持っていく手間がなくなり良かったですけど。)。
ほんで、その話題が・・・ってことですが、本日、弁理士会でその研修がありました(講師は、知財高裁4部の岡山忠広裁判官(47期)と1部の遠山敦士裁判官(58期))。
ま、審決取消訴訟って統計を取ったわけじゃないですけど、恐らくその過半は弁理士だけの出訴じゃないかなあと思います。
なので、知財高裁としては、弁理士をちゃんと躾けないといけないわけですね。
で、今日の話によると、最初の予定とは違って、知財高裁でmintsが始まるのは、今年の夏頃らしいです。
私はとっくに始まってるのかと思ってたのですが(最近、審決取消訴訟もねえなあ)、全然遅いです。さすが裁判所、早く!というインセンティブが全くない所ですので、こんなものなのですかねえ。
やっぱ、裁判官自体もIT化(AI化)しないとダメだなあ(そうすりゃあ珍型コロナだろうが、次の流行り病だろうが、気にせず裁判ができるはず。)。
4 追伸
毎度おなじみ流浪の弁護士、散歩のコーナーでございます。
本日は、ここ山本橋に来ております。
で、久々に高浜運河の方に向かいます。
テクテクと歩きます。
ここから運河沿いを外れます。
今日はトンビとカラスが追いかけっこをしてましたね。1対1ではトンビの勝ちでしょうけど、カラスは集団でトンビの獲物(恐らくと殺時に出た切れっ端)を横取りしておりました。
のように、ここは都心の大きなターミナルがごく近くにありながら、グレートハンティング的な自然味溢れる状況が見れるという稀有な場所ですね。